肥料とは

肥料は、植物を生育させるための栄養分として、人間が施すものです。日本の肥料取締法では、「植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地に施される物及び植物の栄養に供することを目的として植物に施される物をいう」と定義されています。

植物は一般的に次の必須元素17種類を必要とします。
窒素 (N)、リン (P)、カリウム (K)、カルシウム (Ca)、酸素 (O)、水素 (H)、炭素 (C)、マグネシウム (Mg)、硫黄 (S)、鉄 (Fe)、マンガン (Mn)、ホウ素 (B)、亜鉛 (Zn)、ニッケル (Ni)、モリブデン (Mo)、銅 (Cu)、塩素 (Cl)

このうち窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)は肥料の三要素と呼ばれ、さらにカルシウム、マグネシウムを加えて五大要素と呼んでいます。

空気、水に含まれる水素、酸素、炭素は、肥料として与えることは必要ありません。日本では塩素と硫黄は不足することはほぼなく、鉄、亜鉛、銅などは植物の成長には微量で十分で、一般の土壌で不足することは少ないです。

植物の成長を助ける有用元素があります。
ナトリウム (Na)、ケイ素 (Si)、セレン (Se)、コバルト (Co)、アルミニウム (Al) 、バナジウム (V)

農産物を生産すると言うことは、農地から野菜や果実を収穫することで、これは農地からの栄養分を持ち出すことになります。従って持ち出された栄養分は、不足することになるので、これを肥料として補うことが必要となります。

オリーブで、栄養素が木、葉、実にの摂取状況と実を1トン収穫したとき、持ち出された栄養素の量。

肥料の歴史

 

農業の始まりから21隻までの肥料の歴史。 出典:肥料の歴史 高橋英一 化学と生物

現代の農業では、農場から作物として持ちだされた多くの栄養素は、化学肥料で補われています。3大栄養素の窒素は、大気中の窒素ガスですが、リンとカリウムは、地下の鉱物が供給源で、供給源の限界が懸念されています。

肥料の分類

肥料は有機物を原料とした有機肥料、無機物を主成分とする無機肥料(化学肥料)、これらを適宜混ぜ合わせた配合肥料に分けられます。

堆肥などの有機肥料と無機肥料(化学肥料)の農法のいいずれが良いかとの2者択一的議論がありますが、この二つの異なる肥料で作物の成長に相違はないとの長期にわたる実験報告があります。作物は栄養分を無機質で吸収することを考えると理に会うと考えられます。

固形肥料と液体肥料

肥料の形態から固形肥料と液体肥料に分けること出来ます。液体肥料は、養液とも呼ばれ、ハイドロポニックス(水耕栽培)、植物工場、養液土耕栽培(ファーティゲーション)などに使われます。

日本における最初の養液栽培は、1946年(昭和46年)に現在の東京都調布市に建設された「米大八軍調布水耕農場」で、当時世界一の水耕栽培農場(礫耕栽培)でした。培養液は、1週に2回化学分析をして、常に栽培に最適になるよう調整していました。このように液体肥料は、このような調整が容易な点も利点です。

バイオスティミュラント

バイオスティミュラント(Biosutimulants、生物刺激剤)とは、植物や根圏に与えて、自然のプロセスを刺激(スティミュレイト)して、栄養素の取り込みを促進したり、植物の非生物的ストレスに対する耐性を高める、作物の品質をする物質や微生物のことを言います。このバイオスティミュラントは害虫に対して直接作用を持たないため、農薬の規制の枠組みには含まれません。

バイオスティミュラントは、植物に対する高温、低温、乾燥、霜などの非生物的ストレスの緩和、栄養素の取込みの促進をすることにより、気候や土壌に起因する植物のストレスを軽減し、植物をよりヘルシーにする資材と言えます。

具体的には、フルボ酸などの腐植質、海藻や多糖類、ミネラル、微生物などがあります。

欧州では、2011年に EBIC(European Biostimulant Industry Council )と言う協議会を設置、研究、利用法の開発、促進を行っています。

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